1992年 京都大学卒業 |
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お名前: 池田 房夫先生(1992年卒) |
所属施設: 公立甲賀病院 |
公立甲賀病院 は、病院全体では専攻医が5~6名、ローテーターの研修医が4名、
スタッフ全員で75名の小規模病院です。(初期研修が終わるとほぼスタッフ扱い)
外科に関して言うと、乳腺外科医を含めて6名で、専攻医はいません。
私個人としては、比較的「田舎の病院」を中心に回ってきたので、大きな病院じゃなくて、
こじんまりした病院に来ることが出来て良かったですね。
大規模病院は、スタッフも多いし相談相手が沢山いますけど、自分が担当する症例数は少なくなりますよね?
公立甲賀病院は、症例数自体は年によってばらつきはあるものの「一人の医師が担当する症例数は相当多い」と思います・・・
それこそ全員が、いつも手術室にいないといけないような状況ですね。
大学のような桁外れな大きな手術は流石にしないですけど、
一般病院で経験しないといけない手術は全部経験できます。
実際に、これまで6年あまり公立甲賀病院で勤務していますが、救急外来から来て断った患者は多分一人もいないです。
忙しくてもたくさんの手術がこなせる理由は、公立甲賀病院には「手術に集中」出来る体制がちゃんと整っているからです。
公立甲賀病院には「診療支援課」という部署がありまして、我々の専属のパートナーがいるんです。
「診療支援課」のパートナーは、クリティカルパスの入力や、診断書・NCDの入力まで対応してくれます。
また外来の時は横についてくれてオーダリングまで全てしてくれるんです。
実は、今日も手術の申し込みの期限日なんですけど、私は一切なにもしていません。(笑)
だから我々は、1日中手術室に居て手術だけに集中することができるんです。
それに当院は麻酔科の先生が4人いるので、手術室を効率よくフル稼働できます。
「今日は遅いなぁ」と感じても18時ぐらいには仕事が終るっていう・・・
だから勤務時間も、8:30に出勤して17:15まで、18:00頃までウロウロはしている先生もいますけど、
ほとんどの先生がまだ明るい時間に帰っていますね。
また公立甲賀病院は、手術と同じだけ「化学療法」にも力を入れているので
「化学療法」についても、かなり勉強できます。
医局も科ごとに分かれていなくて全員同じところにいるので、各科の垣根が非常に低く、
解らないことは直ぐに他科の先生にも相談できる、いい環境だと思いますよ。
小さな病院には小さな病院なりの良いところがありますが、手術以外の経験値も上げられる
環境が整っているのは公立甲賀病院のメリットですね。
京都大学外科の冬の同門会*で公立甲賀病院は「小規模病院部門」で4年連続の学術表彰を受けているので、学術活動の多さは自負しています。
年に1度、京都大学外科関連病院の中から年間で優秀な学術活動を修めた施設が表彰される
公立甲賀病院みたいに地域の病院でも、今現在やっていることに満足するんじゃなくて、ちゃんと外に出て現状のレベルをキャッチアップすることが重要だと考えているんです。
キャッチアップする一つの方法が「学会での発表」だと考えていて、自分たちが「今やろうとしていること」を、批判覚悟で「外に向かって発信する」ことが大切だと思って積極的に参加しています。
一応、全国学会で全員「年2回以上」、ローテーターの先生も近畿・関西エリアで発表すると決めていて、今のところは全員が守ってくれていますよ。
私も異動して来てから6年以上経ちますが、毎年3回学会発表をしています・・・
若い先生が発表しているのに上の者が発表しないのはマズイでしょ?
学術活動に積極的なのは「教育病院」になることを目指しているからです。
正直なところ、小規模病院だとマンパワーも少ないし、2~3年過ごしても
何かのスペシャリストになれるわけではないと思うんですね。
でも逆に大規模病院だからといって、研修期間が修了して「これで外科医として一人前だ」と
自信を持てる先生も少ないと思います。
ほとんどの先生達は「外科医として一生やっていけるかな」って不安になることの方が多いと思いますよ・・・
成長がゆっくりな先生は特にね。
そういう先生達が「外科って楽しいな」って思ってもらえるような、
自信を身に付けられる教育プログラムを考えています。
例えば、手術に自信を持たせると言っても、全く同じ手術を100回繰り返すことなんて
現実的じゃないですよね。
スポーツでも、いつでも同じ状況の中で競技が出来るなんてことはありません。
だからこそ、腕立て伏せとか腹筋運動とか「基礎的」なことをきっちりと体に叩き込んで、
思いがけない状況でもベストパフォーマンスを発揮できるようにするのだと思います。
公立甲賀病院でも、手術の「基礎」になるところをしっかりと身につけられるプログラムを考えています。
具体的に言うと「この手技が出来れば」というわけではなく、
手術で「今自分が、何をしようとしているかをちゃんと口で説明できる」ようになる、チャート式プログラムを目指しています。
口で説明できないと、失敗した時には「なぜ失敗したのか解らない」、上手くいった時でも「なぜ上手くいったのか解らない」ですからね。それでは成長しませんよね?
野球の野村監督も「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」って言ってますよね?
もちろんチャート式プログラムをクリアしたから「外科医として完璧」だとは思いませんが、当院の外科プログラムで研修することで「自分が何をしようとしているかを口で説明でき」て「自分の力で手術を完遂できた」と本人が理解できるようにしてあげたいなと思っています。
研修期間で、スペシャリストになれる先生というのはそんなに沢山いないと思うので、研修中に次のステップに備えるためにも公立甲賀病院に来て欲しいですね・・・
まぁ今の若い先生たちが、中堅になったときにまた帰って来てくれるのが一番嬉しいですけどね。
この年まで「他科の方がよかったな」と思うことは一度もなくて、
本当に外科医でよかったなと思っているんですね。
その理由の一つが、外科は医師になった時点では「誰も手術できない」状態なので、全員が同じスタートラインで始められるからです。
器用不器用はもちろんありますが、器用さはそんなに必要ないと思っていて、正しく技量を身に付けさえすれば、(一流までいかなくても)一人前の外科医になることは、誰でも可能だと思います。
公立甲賀病院では「田舎を言い訳にしない」というのを心に決めているんですが、この周辺は地域的に高齢の患者さんが多いので、大きな手術をすることだけが重要ではありません。
もちろん高齢だからと言って手術しないわけではなく、当然のことですけど「親身になってやる」ということを心がけています。
必然的に、患者さんとの距離はすごく近くなりますので、怒られることもありますが(笑)
感謝される時は他科とは比較にならないぐらい感謝される・・・
その点は、外科としての「やりがい」「魅力」だと思いますね。
「キツイ」「シンドイ」というイメージが先行すると思いますけど
それは、どの科に行っても最初は同じです。
公立甲賀病院は「教育病院」として、その大変な期間をできるだけ短くすることを目指していますので、
ステップアップのために力を付けたい、若い先生にはぜひ公立甲賀病院に来て欲しいですね。