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お名前: 浅生 義人先生(1993卒) |
所属施設: 枚方公済病院 |
私は1993年に三重大学を卒業後に、大学を離れて「天理よろづ相談所病院」で初期研修を行い、後期研修で腹部一般外科にすすみ、その後に京都大学外科へ入局しました。
ただ、その後に京大大学院に進学はせず「天理よろづ相談所病院」で長く勤務した後、今は「枚方公済病院」で勤務しているので市中病院でキャリアを積んできたことになりますね。
これまでを振り返ると市中病院であっても、非常に恵まれた環境であったと思います。
まず「天理よろづ相談所病院」は、圧倒的に患者さんの数が多く手術数も京都大学外科関連病院の中では、年間1000件を超えるハイボリュームセンターだったので十分な臨床経験を積むことができました。
また当時の指導医が、松末智先生(現:医療法人桐葉会木島病院)をはじめ、経験豊富な先生方ばかりで、若手がどんどん執刀できる環境でしたので、多くの臨床経験を積むことが出来ました。
先輩や同僚の先生、多くの後輩の先生達も非常に優秀でしたので、多くの刺激をうけながら仕事ができたと思います。
若い先生は「進学するか」それとも、このまま「市中病院で経験を積むか」など悩む時期があると思います。
正直、どちらが良いのか私にはわかりませんが・・・
外科医というのは「指導医」や「周囲の環境」次第で、臨床面もそうなのですがアカデミックな面でも大きく影響を受けると思います。
自分が成長できそうな「指導医」や「環境」を選ぶことは非常に重要だと思います。
年数を重ねていけば必然的に経験が増えるわけですから、大学でも市中病院でも誰が指導医でも、ある程度は成長出来ると思いますが、
私の場合、市中病院でのキャリアアップが、難しく感じる時も有りましたね。
例えば「腹腔鏡手術」を本格的に導入された頃がそうですね。
「ラパ胆」があっという間に標準手術になってきましたが、「大腸癌」や「胃癌」への適応拡大はハードルが高いと感じていました。
もちろん「天理よろづ相談所病院」でも、腹腔鏡手術の導入をしていたのですが、「大腸癌」や「胃癌」に対して手技の定型化を意識した本格的な導入には至っていませんでした。
ちょうどその頃(2007年)に、京都大学から長谷川傑先生(現:福岡大学消化器外科教授)が「天理よろづ相談所病院」に異動して来られ、京都大学消化管外科の「腹腔鏡手術」の技術を指導してくださり、私もトレーニングをうける事が出来ました。
その時に、最新の情報が集まる「大学からの指導が必要」と痛感しました。
豊富な症例数がある環境で、大学の腹腔鏡手術の手技を本格的に指導をうけることができたことはとてもラッキーでした。
今は、腹腔鏡手術のスペシャリストと呼ばれる先生方が、京都大学外科関連施設には沢山おられますし、手術動画が配信されたり、学会で「施設見学」が可能であったりとトレーニングの環境も整ってきているので、市中病院にいても新しい技術は十分に学べると思いますけどね。
現在、枚方公済病院の外科症例数は徐々に増えているところです。
ただ消化管が中心ですので、肝胆膵の高難度手術もというわけにはいかないのが、難しいところです。
消化管に関しては、他の施設と遜色のない手術を行うことを意識して行っています。
若い先生方はどうしてもハイボリューム施設に目がいくと思いますが、当院のような中規模施設にもいろいろメリットがあると思っています。
枚方公済病院は小規模病院であるため、病院の全スタッフとのコミュニケーションが取りやすく、困っている時に色々な部署との連携が取りやすいです。
外科に限ると「この道具が良いよ」という情報が入れば、すぐに購入してもらえたりしますね。
枚方公済病院は、良い提案であれば、すぐに取り入れるという病院全体の動きが非常にスピーディなのが特徴だと思います。
また枚方公済病院は、循環器内科が中心となって「内科救急」に力を入れて成長して来た歴史があり、救急を中心とした急性期医療に病院全体で取り組んでいます。
病院全体が結束して、一体感があり、今は病院全体が非常に良い雰囲気ですよ。
病院全体が成長しようとしている雰囲気なので、我々外科も一緒に成長できるように、努力しているところですね。
これまで枚方公済病院外科には、若い先生になかなか来てもらえない状況が続いていました。
でも2018年から始まった「新専門医制度」から状況が変わり始めています。
枚方公済病院外科は、京都医療センターを基幹施設とする「きょうと外科専門研修プログラム」に連携施設として加わっていますが、そのプログラムに所属する専攻医2年目の若い先生が久しぶりに当院に来てくれました。
枚方公済病院外科の症例は、年間600例ほどで「肝臓」の症例数が少ないため、消化管メインでの修練となりますが、手術手技や化学療法などの外科治療の「質」は、他の京都大学外科ハイボリューム施設と遜色のなく経験することが出来ます。
症例数も増やせるように努力しているところで・・・
実は私、枚方公済病院の地域連携室室長を兼務しています。
患者さんを紹介していただく地域の診療所の先生方を時間があれば地域連携室のスタッフと訪ねているんですね。
開業医の先生方から、様々なご意見を伺うことができるので、大変勉強になっています。
訪問は、紹介患者さんの御礼や報告などが中心ですが、地域の先生方と顔の見える信頼関係を築いて、患者さんを紹介していただき症例数の増加に繋がればと思っているところです。
お陰様で、徐々にですが症例数も増加しているので、外科診療の「質」と「数」共に十分に経験することが出来る状況に向かっているものと思います。
若い先生方は、安心して枚方公済病院でキャリアアップを目指していただけると思います。
枚方公済病院の外科は『常勤医6名で多忙』と思われるかもしれませんが、年齢や立場関係無く雑務含め外科スタッフ全員が一様に仕事を行います。
そのため一人に仕事が集中することはなく、お互いにフォローする環境が整っています。
比較的に落ち着いた状況ですので、あまり遅くならずに帰宅することが出来ています。
「ワーク・ライフ・バランス」とは言われるものの、多くの施設では難しいことと思いますが、当院では病院全体で夜間、休日の当番制が定着していますし、当直明けの半日勤務も決まりごとになっています。
家庭の事情で有給休暇を取得するなども周囲に気兼ねなく可能です。
「ワーク・ライフ・バランス」への配慮が充実している施設ですので、例えば・・・
非常に働きやすい病院だと思いますよ。
外科の修錬には時間がかかりますが、根気良く、いいお手本の手術をまねて、頑張ってもらいたいと思います。
これまで多くの若い先生方と一緒に仕事をし、指導に携わってくる中で成長はひとそれぞれと感じていますが、幸いに京大外科関連施設には指導医がそろっていますので、いろいろな施設で指導をうけることで、確実に成長できると思います。
また、臨床の中で苦労した経験、うまくいった方法などは、他の施設の先生方の必ず役にたつ知識だと認識して、「記録」し「発表」し続けていくことが、外科医には求められていると思います。
これも市中病院でキャリアをつなげていくポイントかと思います。
私が外科医になりたての頃は、まだ開腹手術が主流の時代でした。
それが今は、「腹腔鏡手術」が当たり前になっていて、更に「ロボット支援手術」が、各施設で導入され始めています。
外科医療は、時代の流れとともに凄い速さで「進化」していると実感しています。
これからも私達の世代で経験したことの無い医療が、どんどん登場してくるはずで、興味がつきません。
そして多くの先生方が言っておられると思いますが、手術は、非常にやりがいがあって魅力です。
癌患者さんにとって「自分の治療を誰に頼むか」というのは大きな問題ですよね。
その時に「高難易度」の手術であっても、患者さんの期待に応えられる手術が出来るということは、とてもやりがいがあることだと思います。
是非、多くの若い先生方が枚方公済病院に来てくれると嬉しいですね。