「腹腔鏡下肝切除術の現況~今後の発展を目指した現時点での標準化~」
「CUSA の使い方」
多忙を極める3月の初旬に、関東、東海、山陰、中四国、九州の遠方から20名の、また他大学から7名のご参加をいただき、全体で105名が集まる盛況でした。特別講演をいただいた田中先生、幹事の先生方、ご発表くださった先生方を始め、関連施設の皆様のご協力に心から感謝申し上げます。
2014年10月11日(土曜日)にメルパルク京都において第14回京都肝臓外科セミナーを開催いたしました。前回のセミナーと同様に東は東京から西は九州・小倉まで数多くの施設からご参加いただきました。
また、他大学からも4名のご参加をいただき、総勢102名の参加者数となりました。前回(第13回)セミナーでも104名のご参加を頂き、過去7年の本セミナーの歴史の中で、連続して100名以上の参加者数となったのは初めてのことであり、ご参加いただいた皆様に厚く御礼申し上げます。
今回は「腹腔鏡下肝切除術の現況~今後の発展を目指した現時点での標準化~」をテーマとして募集いたしましたところ、各施設から興味ある演題を計6題応募いただきました。
現在鏡視下肝切除術として保険収載されている標準術式(肝部分切除・肝外側区域切除)と拡大術式に分け、2部構成で会を進行させていただきました。
三菱京都病院:田中崇洋先生からはグリソン根部処理を伴う定型的な肝外側区域切除を提示していただきました。鏡視下手術の利点である拡大視効果を利用して安全・確実にグリソン処理を遂行する手順を示していただきました。
神戸市立中央市民病院:岡田和幸先生からは肝実質をVIO® ソフト凝固にて前凝固した後に実質をCUSA®にて破砕することにより、肝実質切離時の出血を抑えて肝実質内の微細な構造を確認しつつ的確に脈管処理を行う方法を提示していただきました。
東京都立駒込病院:坂元克考先生からはArantius板を解剖学的ランドマークとして利用した左葉切除および高難度手術である肝S7/8切除を提示していただきました。
大阪赤十字病院:奥村慎太郎先生からはIVC圧排例の尾状葉切除、肝門部を圧排したHCCに対する中央2区域切除と拡大左葉切除、巨大HCCの右葉切除、ICCのリンパ節廓清併施例、など意欲的な適応拡大の試みを提示していただきました。
田附興風会北野病院:飯田拓先生からは大腸癌肝転移に対してPTPE施行後に行った肝右葉切除を提示していただき、現時点での腹腔鏡下肝右葉切除における利点と問題点を整理していただきました。
京都大学肝胆膵移植外科:新田隆士先生からは鏡視下手術において先進的治療を推進している藤田保健衛生大学での勤務経験から肝外グリソン先行処理による腹腔鏡下系統的肝切除術をご呈示頂きました。
いずれも肝切除術を精力的に行われている施設からの演題であり、現在の腹腔鏡下肝切除術の標準術式と目標とすべき発展形を評価・共有する興味深い内容でありました。加えて、コメンテーターをお引き受けいただいた大阪市立総合医療センター肝胆膵外科:金沢景繁先生からは豊富な肝臓鏡視下手術のご経験を踏まえて各演題に対して的確なご指摘・問題提起・アドバイスをいただいただけでなく、フロアとの間でもpraticalな議論を展開していただき、大変勉強になりました。この場をお借りして改めて深く御礼申し上げます。
また、今回は肝切除術を行うにあたり基本的な知識の確認を目的としたミニレクチャーを初めてプログラムに組み込みました。
記念すべき第一回は「CUSAの使い方」について田附興風会北野病院外科:内田洋一朗先生に講義していただき、若手肝臓外科医の皆さんだけでなく、中堅・ベテランの先生方にとっても知識の整理になったのではないかと思います。
次回以後も様々なテーマでミニレクチャーを企画する予定で、これから肝切除術を行う若手の先生方に有意義な情報が提供できればと思います。講師は現在高度技能医取得を目指して執刀経験を積んでいる気鋭の若手肝臓外科医を候補として考えておりますので、ご協力をよろしくお願い申し上げます。
さらに、西神戸医療センター外科:石井隆道先生から術後胆汁漏出に対する多施設共同研究の進捗状況を報告していただきました。順調に症例集積が進んでおり(今回セミナー開催時76例)、本年度中に目標症例数(100例)に達する予定です。
多くの施設のご協力に感謝するとともに、今後ともよろしくお願い申し上げます。一方で、本セミナーを中心とした新しい多施設共同研究の立ち上げも計画しております。今回の幹事会では大腸癌肝転移に関する研究が候補として挙がり、具体的計画立案に向けて今後アンケート調査をさせていただくことも考えておりますので、その際はご協力をよろしくお願い申し上げます。
次回は2015年3月7日(土曜日)にいつも通りメルパルク京都において開催を予定しております。具体的なテーマが決まりましたら改めてご報告させていただきますので、次回以後も多くの皆様のご参加をよろしくお願い申し上げます。
2014年11月 京都肝臓外科セミナー事務局一同 文責:安近健太郎