「膵切除術の現況~今後の発展を目指した標準術式の把握~」
CSLベーリング株式会社 京都支店学術
「肝中央切除術における胆汁漏の現状についての多施設共同前向き研究」(最終報告)
西神戸医療センター 石井 隆道
膵頭十二指腸切除アンケート結果
京都肝胆膵外科セミナー事務局
「膵頭十二指腸切除における膵消化管吻合」
京都医療センター 成田匡大
1. 「膵頭十二指腸切除術における手技の工夫;Anterior and Left Lateral Artery First Approach」
倉敷中央病院 嵯峨謙一(H23 卒)
2. 「門脈浸潤を伴う膵頭部癌に対する膵頭十二指腸切除術-当科の手術手技と治療成績-」
神戸市立医療センター中央市民病院 岩村宣亜(H22 卒)
3. 「当科における膵頭十二指腸切除術」
西神戸医療センター 長井和之(H12 卒)
1. 「当院での膵頭十二指腸切除における再建方法」
関西電力病院 細田洋平(H16 卒)
2. 「膵手術専用 sleigh 型 needle による膵空腸吻合の工夫」
大津赤十字病院 大江秀明(H7 卒)
3. 「当院における膵頭十二指腸切除時の再建法、Blumgart 変法を中心に」
日本赤十字社和歌山医療センター 上村良(H14 卒)
4. 「当院での標準的膵頭十二指腸切除術 ~膵胃吻合を中心に~」
天理よろづ相談所病院 畑敏行(H12 卒)
京都大学肝胆膵移植外科 教授 上本 伸二 先生
2016年3月5日(土曜日)にメルパルク京都において第17回京都肝胆膵外科セミナーを開催いたしました。
これまで「京都肝臓外科セミナー」として肝臓外科手術に特化して開催してきた本セミナーですが、今回から「京都肝胆膵外科セミナー」と名称改変して膵臓外科手術もテーマとして取り上げてゆくことになりました。
前回のセミナーと同様に東は東京から西は九州・小倉まで数多くの施設からご参加いただきました。
また、他大学からも5名のご参加をいただき、総勢123名と過去最多の参加者数となりました。ご参加いただいた皆様に厚く御礼申し上げます。
今回は「膵切除術の現況~今後の発展を目指した標準術式の把握~」をテーマとして募集いたしましたところ、各施設から多数(計12題)の興味ある演題応募いただきました。
時間の関係からすべてを採択することができず、事務局内で協議の結果、7題を採択させていただきました。
採択できなかったご施設にはこの場を借りて改めてお詫び申し上げますとともに、今後のセミナーへのご協力をお願いする次第です。
採択させていただいた7題を標本摘出過程と再建過程に分け、2部構成で会を進行させていただきました。
倉敷中央病院:嵯峨謙一先生からはSMA神経叢2/3周郭清およびIPDA根部処理を左側より先行するanterior and left lateral artery first approachを提示していただきました。
神戸市立医療センター中央市民病院:岩村宣亜先生からは門脈浸潤を伴う膵頭部癌に対する膵頭十二指腸切除・門脈合併切除術を提示していただきました。
いずれもSMA周囲神経叢郭清を伴い、近年の標準術式となっているartery first approachをお示しいただきました。
西神戸医療センター:長井和之先生からは浸潤が疑われる症例を除き積極的にSMA周囲神経叢を全周温存し、空腸間膜根部の郭清では空腸断端のSMA、SMV 右側への引き抜きや膵頭部の右側への牽引は行わずにSMA左側から背側の郭清を行う術式を提示していただきました。
関西電力病院:細田洋平先生からは5-0 PDSを用い後壁・頭側・尾側・前壁の4針で空腸全層と膵実質を含めた膵管壁を縫合する簡便な膵管空腸吻合をご提示いただきました。
大津赤十字病院:大江秀明先生からは独自に考案された膵手術専用sleigh型needleによる膵空腸吻合ご提示頂くとともに、関西電力病院と同様の膵管空腸4針吻合の安全性を豊富な症例数を基にお示しいただきました。
日本赤十字社和歌山医療センター:上村良先生からはBlumgart変法による膵空腸吻合および術式標準化による手術成績向上をご提示いただきました。天理よろづ相談所病院:畑敏行先生からは胃体上部小弯後壁に膵断端を嵌入させ胃壁全層と膵実質を3-0 Prolene糸で縫合する胃膵吻合(嵌入法)をご提示いただきました。
いずれも膵切除術を精力的に行われている施設からの演題であり、現在の膵頭十二指腸切除術の標準術式を共有するだけでなく、術後合併症に大きな影響をもたらす膵管空腸吻合の簡便化・標準化をも期待させるような興味深い内容でありました。
一方で、今回は初めて膵頭十二指腸切除術をテーマとして採用するにあたり本セミナーの幹事在籍施設での現況を把握するためにアンケート調査を実施いたしました。
回答いただく担当先生の負担を可及的に軽減させるべく、標準術式(基本術式・再建法・膵断端再建・膵管ステント)と短期予後(膵漏・DGE・術後在院日数)のみのアンケートと致しました。
全施設からご回答をいただき、集計結果を本会内でご報告いたしました。アンケートの生データは現況把握のみならず、今後のセミナーテーマを考えるうえでも大変興味深い情報となりました。大変お忙しい中、ご協力をいただいた皆様に改めて感謝いたします。
また、基本的な知識の確認を目的としてご好評をいただいてきたミニレクチャーを今回もプログラムに組み込みました。
今回は「膵頭十二指腸切除における膵消化管吻合」として京都医療センター:成田匡大先生に講義していただき、若手肝胆膵外科医の皆さんだけでなく、中堅・ベテランの先生方にとっても知識の整理になったのではないかと思います。
次回以後も様々なテーマでミニレクチャーを企画する予定です。将来の肝胆膵外科医育成の一助となるべく、気鋭の若手肝胆膵外科医のみならず、経験豊富なベテランの先生にも講師をお願いしていきたいと考えておりますので、ご協力をよろしくお願い申し上げます。
さらに、西神戸医療センター:石井隆道先生からは、本セミナーを中心にして初めて立ち上げた術後胆汁漏出に対する多施設共同臨床研究の結果がWorld Journal of Surgeryに論文掲載されたことを報告していただきました。
多くの施設のご協力に感謝するとともに、今後新たに立ち上げる臨床研究:「同時性切除不能大腸癌肝転移に対する肝先行切除または原発先行切除の有用性および安全性の検討」でもご協力をよろしくお願い申し上げます。
一方で、膵切除分野でも本セミナーを中心とした新しい多施設共同研究案も考慮されます。具体的計画立案に向けて今後アンケート調査をさせていただくことも想定されますので、その際はご協力をよろしくお願い申し上げます。
次回は2016年9月17日(土曜日)にいつも通りメルパルク京都において開催を予定しております。具体的なテーマが決まりましたら改めてご報告させていただきますので、次回以後も多くの皆様のご参加をよろしくお願い申し上げます。
文責:安近健太郎