お名前: 片岡 幸三先生(2007年卒) |
所属施設: EORTC (European Organisation for Research and Treatment of Cancer) |
このたび平成27年度京都大学外科冬季研究会の学術表彰で、
The Highest Impact Factor賞、戸部隆吉賞、個人戦の3部門で表彰していただきました。
当日参加させていただくことが出来ませんでしたので、
この場をお借りまして感謝の意を述べさせていただきたく存じます。
誠に有難うございます。
今回表彰していただいた大腸癌肝転移に関する2つの論文は、
いずれも大阪赤十字病院に在籍していた時に携わらせていただいたものです。
大阪赤十字病院は症例が豊富で、
私のような若手にも様々なチャンスを与えていただけるため、
非常に働き甲斐のあるよい職場でした。
大阪赤十字病院はまだ紙カルテベースであったため、
よくデータ収集のために、病棟の仕事が終わった夜に外来で
患者のカルテを調べていていました。
データを集め、結果を毎年国際学会と国内学会で発表し、
結果を論文化させていただくということを在籍中は繰り返しておりました。
最初は抄録の書き方、論文の書き方、投稿の仕方、
reviewerへの返事の仕方など全てがほぼ未経験であったため、
全ての作業が非常に勉強になりました。
大阪赤十字病院を離れてからも、日常臨床のお忙しい中論文作成のご指導をいただきました、
中島研郎先生、金澤旭宣先生(現北野病院)には
この場をお借りして改めて御礼申し上げます。
後ろ向き観察研究の結果を何回か論文として形にさせていただいた後で、
ようやく気付いたこととして、データ収集、解析に入る前の
臨床実施計画書 の作成の重要性があります。
どのようなデータを集め、どのような解析を行いたいのかを、
臨床実施計画書 を作成することにより
最初の段階で予め吟味することは非常に重要であると今になると思います。
比較検定を10回繰り返せば、そのうち約半分の確率で
どれかのグループでP<0.05が得られるため、検定を繰り返し、
有意差ありの結果をメインに取り上げて論文に記載しても、
時に結果の解釈に苦しみ、discussionの記載に困ることになります。
また、早いうちから学会発表や論文作成に触れることは、
主に二つの理由からためになると考えております。
一つ目は、観察研究について自分で考えることにより、
より批判的な目で論文を読むことができるようになるということです。
より批判的な目で論文を読む姿勢は、自分で論文を作成する際に非常に役に立ちます。
二つ目は、論文作成を日頃から行うことで、
日常臨床からclinical questionに敏感になり、
文献を調べる癖がつくようになるということです。
該当するclinical questionに関するreviewが見当たらなければ、
reviewを執筆できるチャンスですし、
解決されていないclinical questionがあれば、
それが次回の研究につながる可能性があります。
私のresearch mindを養っていただいたそもそものきっかけは、
学生時代に旧第一外科の膵3研にお邪魔して
研究のお手伝いをさせていただいたことがはじまりです。
P値のことも知らない、英語もまともに書けない無知な学生時代の
私を辛抱強くご指導いただいた土井隆一郎先生、藤本康二先生、
伊藤大輔先生、その他研究室の先生方の存在がなければ、
研究には全く無縁の生活で今回表彰をいただくこともなかったと考えております。
この場をお借りして深く感謝申し上げます。
現在(2016年時点)は、EORTC (European Organisation for Research and Treatment of Cancer)という
EUの臨床試験グループで臨床試験の仕事に従事しておりますが、
いずれは外科医として再度修練を再開させていただきたいと考えておりますので、
今後も京都大学外科交流センター会員の先生方皆様にはご指導賜りますよう、
よろしくお願い申し上げます。