外科治療の向上と優秀な 外科医 を育成する
一般社団法人京都大学外科交流センター
11:00~18:00(月〜金)

自分の力で「 自信 」を持って手術を完遂出来る 外科医 を育てる

 
財間正純先生

1980年 京都大学卒業
1992年 三菱京都病院
2006年 滋賀県立成人病センター
2018年 滋賀県立総合病院
    ※滋賀県立成人病センター名称変更
     ・副院長
     ・外科科長
     ・緩和ケアセンター長

お名前: 財間正純先生(1980年卒)

所属施設: 滋賀県立総合病院

滋賀県立総合病院 外科について

滋賀県立総合病院の外科スタッフは現在12名(うちレジデント2名)ですが、
2019年春からスタッフ1名とレジデント1名が京大消化管外科大学院へ行き10名体制になりました。

現在は、週日の外来対応は2名となり手術要員は8名体制になります。

滋賀県立総合病院は、年間症例が約800~900例のハイボリュームセンターでもあるので、
外来・手術・病棟業務など非常に多忙ですが「働き方改革」を実践しながら調整しています。
※なお乳癌診療は2015年より外科から分離し乳腺外科で行っています。

滋賀県立総合病院 外科~2018年 総手術件数~

自信 外科医

2018年 総手術件数 812件 (全身麻酔手術646件)HPより

医療の質を高める臓器別制

多忙と言っても「都道府県がん診療連携拠点病院」として質の高い医療を維持し提供し続ける必要があります。

大学病院の場合だと、臓器別の専門チームがあり質を高めることができますが、
地域病院の規模では臓器別のチームは難しい・・・

それで滋賀県立総合病院では、私を含めた3名の外科部長が全体統括となり、
その下に上部消化管、下部消化管、肝胆膵といった指導スタッフを決めています。

もちろん、他の領域を手術することもありますが、 緩やかな臓器別制の仕組みを作る ことで
大学ほどではありませんが、専門性を高め、医療の質を高めています。

院内コラボレーションによる最高レベルの医療

消化管領域では臓器移植以外の手術は、すべて対応し最高レベルを心がけています

実際に滋賀県内では最終施設として、他の病院ではできない困難症例を引き受ける事が出来ていますが、
これを実現するには 院内コラボレーションがとても大事 なんです。

他の外科系の診療科(呼吸器外科、婦人科・泌尿器科等)、特に心臓血管外科と形成外科と
共同で手術をする場合がありますが、スムーズに手術が出来るように良好な関係を築く必要があります。

もちろん外科系以外にも、消化器内科や腫瘍内科、循環器内科、放射線治療科との協力が必要です。

それに患者さんの「QOL」に関しては、緩和ケアとの協力が必要ですが、当院では堀泰祐先生が
21世紀の初め頃から緩和ケアのフロントランナーとして取り組んでこられました。

院内の外科系、内科系含め全体で治療するには、システム的な事ももちろん大事なのですが、
普段の談議で協力体制、良好な関係を築くのが大事だと思っていて、その環境を作るのが
科長としての私の務めと思って取り組んでいますよ。

手術を「 自信 」を持って完遂出来る 外科医 を育てる

自信 外科医

肝臓の手術症例数だけでも年間50例を行っているのは、滋賀県で言えば当院か大津赤十字病院だけになると思いますが、

そうなると当然「癌の標準的手術の教育」が当院の役割になると考えています。

医師が 成長できる 環境を整える

専攻医が 自信 を持って手術に取り組むことが出来るように成長させるために、まず「お手本」となる手術を見てもらって、それから自分で経験してもらって・・・

ちょっと出来るようになれば、次の「お手本」の手術を見てもらって・・・

つまり手術は、まず「見る」ことが大事なんです。

だから若い先生には「自分が手術の担当チームに入っていなくても、時間があれば手術を見に来るように」と伝えていて、今は言わなくても外来が終わったら見に来ますね。

それと「腹腔鏡手術」以外にも「開腹手術」でも、できるだけ手術動画を撮っていて、手術動画ライブラリーとして保管していますので、いつでも手術の勉強が出来る環境を整えています。

もちろん見るだけじゃなくて、手術は自分で「経験」する必要もありますけどね。

これは私自身が最初に赴任した病院の部長に言われたのですが・・・・
「何年助手席に座っていても、運転できるようにならんだろ。自分でやりなさい」
ということを仰っていて、その通りだと今も思いますよ。

「見る」「実際に経験してみる」のスパイラルを3年ないし4年ぐらい当院で修練してもらえれば、
特別困難な手術症例でない限り、標準的な手術は、専攻医が独力で「 自信 」を持って
完遂できるレベルに達することができます。

資格を取るための豊富な症例

手術に「 自信 」を持つためにも「資格取得」も、一つの目標になりますね。

手術には、基準になる「手術手順」があるんですが、
先生たちには「決められた手順に則って取り組む」ように伝えています。

「資格取得」のため、そういう基準となる手術を覚えることで
手術の技術は向上し「 自信 」にもつながると思います。

ただ資格を取得するためには、症例を集める必要がありますからね。

例えば「肝胆膵高度技能専門医」に関しては「高難度肝胆膵外科手術50例以上」経験する必要があります。

「資格を取りたい」と強くアピールする先生には、応えてあげたいのですが、
一人ばっかりに手術を経験させて、他の先生が経験できないと、不満の声も出てくるし
当然周囲が成長できなくなりますからね・・・

そうならないように全員が 外科医 として成長できるように、必要症例数を集めるのも
科長としての務めと思って頑張っています。

若手を指導する中堅医師を確保する

自信 外科医

臨床だけでなく学術面に関しても、指導は私ではなく下の年代・・・中堅の先生方が見てくれています。

若い医師を育てる上でも、実力のある中堅の先生を確保することが、病院にとっては非常に重要なんですが、
どこの病院も中堅医師の確保は苦労しているんじゃないですか?

中堅の先生に来てもらうためには、やはり「症例数」とそれに対して「きちんと対応」しているか
という事が非常に重要だと思いますよ。

周りはちゃんと見ていますからね、施設の情報も集めているし・・・
いい加減な対応をしていると、この施設には「行きたくない」「行かせたくない」なんて事は
当然あると思いますね。

そのためにも「症例」に対して「きちんと対応」することが重要だと考えています。

外科医 の将来について~ 外科医 を目指す専攻医へ~

私は 外科医 をずっとやってきて、40年ぐらいになります。

「腹腔鏡手術」が出てきたのは、医師になって20年目位の頃で、技術も知識もまだ追いつくことができました。

でも、今はもう「ダ・ビンチ」や「ナビゲーションシステム」とかもどんどん進歩していますよね?

この先、自分で考えて手術を完遂する手術ロボットが出てくるかもしれない・・・

でも正直なところ、私は「 外科医 がこの先どうなるかはわからない自動車業界みたいなもの」だと思っていて、
そんな先の時代の外科について聞かれてもとても語れないですよ。

ただ楽観しすぎかもしれませんが、自己判断する手術ロボットは「かなり先かな?」とも思っています。

だからという訳ではないですが、当院は1年目の秋ぐらいから癌の手術を腹腔鏡で、「大腸」、「結腸右半切除」、「S状結腸切除」といった順で始めてもらいますが、2年目になって胃の手術をしてもらうときには「腹腔鏡手術」ではなく「開腹手術」で行ってもらいます。

もちろん学びたい先生には、2年目の終わりか3年目から胃でも「腹腔鏡手術」をしてもらうようにしていますが・・・

最先端の技術だけでなく「開腹手術」を学ぶことは重要だと考えているからです。

ちなみに当院は、腹腔鏡で胃の手術が出来ないから研修を修了できないという事はありませんので安心して下さい。

ちょっと誤解を招く言葉かもしれないけど、若い先生は「あまり遠い先の事(先の技術)を考えない」で、 外科 に来てもらいたいですね。

それと昔は「 外科 は体力がいる」と言っていましたけど、今はほとんど定時に終わりますし、
そんなに厳しい環境ではありませんので、女性の先生にも 外科 に来ていただきたいな。

20代、30代の体力と知力がある時に、沢山の手術を「見て」「経験」することで、 外科医 として伸びると思いますし「 自信 」がつくと思います。

そのためにも我々の施設は、先生方が成長できる環境をいつも整えています。

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