お名前: 横井 暁子先生(1990年卒) |
所属施設: 兵庫県立こども病院 小児外科部長 |
外科医 の 職場 環境を発信することを活動目的としている、京都大学外科交流センター「QOW向上委員会」委員長の横井暁子先生(現:兵庫県立こども病院小児外科)にお話を伺いました。
外科医 が減少している と言われていますが、女性 外科医 が増加傾向にあるのはご存知ですか?
このグラフは、厚生労働省「医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会」で提供された資料です。
グラフを見ると、現在指導的立場にいる40歳代の先生達の層は、女性外科医の割合が増えていることが解りますよね。
この状況から「QOW向上委員会」では、京都大学外科各関連施設での「職場環境」が、現状の外科医の状況に対応しているのか出来るだけ詳細に把握する必要があると考えています。
職場 環境を詳細に把握することで、各関連施設の「職場環境の問題点」が明確になります。
この 職場 環境の問題点という情報を各関連施設外科代表者と共有することで、外科医の仕事内容改善、ゆくゆくは 職場 環境の向上に寄与すると考えています。
そこでQOW向上委員会では、京都大学外科各関連施設で働く 外科医 の 職場 環境を出来るだけ詳細に把握するために、主に2つの活動に取り組んでいます。
一つ目は2年に1回行われる、勤務医師の勤務支援状況を把握するための「アンケート調査」です。
(過去のアンケート調査を掲載)
アンケート調査を行うことで、勤務医師の「支援体制状況」を把握することができました。
実際に、多くの京都大学外科関連施設では、勤務医師の支援体制を整えていることが解りましたが、その一方で「オンコール免除」などの支援制度を利用することへの「不安」を勤務医師が抱えていることも解りました。
支援制度を利用することで、上司や同僚がどう思うのか気になりますからね。
でもアンケート結果に対して、さらに「意識調査」を行った結果、勤務支援制度の利用に対して職場の上司・同僚の意識は、概ね好意的であるということも解っています。
このことからも京大外科関連施設では、職場 でのより円滑なコミュニケーションをお願いしたいと思います。
こういったアンケート調査を通して「 職場環境 の問題点」を明確にし、改善するための手助けが出来ると思います。
そして、もう一つの活動が、年2回「女性勤務医師の集い」の開催です。
この「集い」では、これまで 女性外科医、医学生、研修医を対象に参加していただきました。
毎回、10~20名に参加していただいている小さな会ですが、相談の場、息抜きの場、本音を語れる場として、楽しい一時を皆さんと共に過ごさせていただいています。
「集い」には、普段は話す機会の無い、いろいろな病院の先生方が参加してくださいます。
お互いの情報を交換することで「同じ立場の先生が頑張っていて元気が出た!」など、非常に良い評価をいただくことが出来ています。
また 外科医 に興味のある、初期研修医や医学生も参加してくれるので、外科医 の仕事内容について知っていただける良い機会になっていると思います。
当日ご発表いただいた、「女性外科医を続けていくためのアドバイス」は、動画にして公開していますので、是非興味のある先生はご覧ください。
実は、Quality of Work(QOW)向上委員会は、これまで女性勤務医師対策委員会として「 女性外科医 」の勤務支援を主な目的とした活動をしてまいりました。
女性には、妊娠・出産という特別なライフイベントがありますよね?
その中で継続して 外科医 として勤務するための支援対策という意味では「支援体制状況」など一定の効果があったと考えています。
でも本来、女性が働きやすい職場環境というのは、外科医の大多数を構成している男性にも働きやすい 職場環境 でなければならないと思います。
結局のところ、 職場環境 の質の向上を目指すことは、 外科医 の「性別を問わず目指すべき」ということが委員会で話し合われました。
その結果、これまでの「女性勤務医師対策委員会」という名前のままでは、対象を「 女性 外科医 」に絞ってしまう可能性があると考え、全体の「職場(Work)の(of)質(Quality)」を向上させる委員会、つまりQOW向上委員会になったわけです。
委員会の名称を変更したので、今後は男性・女性ともに参加していただき、全体で 職場環境 の向上を目指すことが出来ればと思います。
私が考える 外科医 の「 職場環境 の質の向上」を一言で言えば・・・
ということに限ると思います。
「無駄をなくす」とは・・・
などがあると思います。
すでに京都大学外科関連施設では、これらの取り組みを始めている施設もあると思いますし、導入を目指している施設もたくさんあると思います。
でも「当番制」や「タスクシフト」と言われても、言葉だけで「具体的に何をどうすればいいのかわからない」では、意味がありませんよね?
言葉だけではなく、実際に「どのような制度なのか」を明確に示す必要があると思います。
そうすることで「質の高い職場」と現実の「ズレ」が浮き上がり「 職場環境 の質の向上」に繋がる新しい案が何かでてくるかもしれません。
まずは、会員の先生方が勤務されている現場の状況を収集し、問題点を抽出することが本委員会の活動目標になると思います。
小児外科の領域は、症例数が少ないんですが「頭部・四肢・心臓以外の臓器」の対応が求められたり「緊急・準緊急」が非常に多い科です。
それと研究会も多くて、成人外科とは違う特有の忙しさがあります。
その多忙さに対応するため、当院では「ゾーンディフェンス」という考え方を採用しています。
いわゆる「完全な当番制」ですね。
たとえば、自分が当番のゾーン(ICU、病棟、手術室など)であれば、担当時間内はゾーン内全ての患者さんに責任を持って対応します。
でも、担当外のゾーンに関しては、勤務時間内でも一切呼ばれることはありません。
そして、担当時間が終われば、次の担当に交代するというやり方です。
完全な当番制(ゾーンディフェンス)を採用することで「担当医以外は、その病気のことを知らない」ということがなくなります。
そのゾーンを担当する全医師が、ゾーン内全ての患者さんを把握している状態ですね。
これには「稀少疾患」を扱うという大きなメリットがあります。
先ほども述べましたが、小児外科領域は「症例が少ない」という現状がありますが、担当するゾーン内の患者さん全てを把握することで、小児 外科医 としての経験値を効率よく増やすことが出来ます。
さらに当番でなければ一切呼び出されることはないので、プライベートの予定も立てやすいですね。
当直後には、当番に当たらないようにすれば、自由に休みをとることもできますし、研究会の準備にあてることもできています。
一方で今後の課題もあります。
たとえば、出産・妊娠などの長期で休むのが難しいという面があります。
当院は、全国からフェローが来る教育施設の役割もあります。
そのためポジションには限りがあり、長期で休むの必要があれば、一旦 職場 を変えることを推奨する形になっているのが現状です。
女性 外科医 の割合は、確かに増加していますが・・・意志決定の場にいる人は、まだまだ少ないのが現状です。
ただ多様性があったほうが、新しいものが生まれる可能性は高いですよね?
男性が多い 外科医師社会の中で、女性外科医の視点が多く入ることで「違った考え方・取り組み」が生まれる可能性を期待しています。
もちろん、こういうことは性別以外の要素も関係していると思いますが・・・一つのきっかけになれるように、私自身が後進のためにも意志決定の場に加わわれるように地道な努力を続けていきたいと思っています。
そういう意味でも、京都大学外科交流センターQOW向上委員会の委員長として、少しでも本委員会の活動が、会員の皆様の 職場 環境 の向上につながりますよう、頑張りたいと思っています。
京都大学外科交流センター会員の皆様にはご協力・ご支援いただければ幸いです。
京都大学外科交流センターQOW向上委員会では、委員の先生方へ相談することが可能です。
などなど、個人的な質問もメールで受け付けております。
ぜひ、お気軽にご連絡ください。