外科治療の向上と優秀な 外科医 を育成する
一般社団法人京都大学外科交流センター
11:00~18:00(月〜金)

後ろ向き研究 の重要性~学会発表を説得力のある内容に洗練する~

 

お名前: 飯田拓先生(1997年卒)

所属施設: 医学研究所北野病院

この度は平成26年度京都大学外科交流センター冬期研究会の
学術表彰を頂きまして、誠に有難うございました。

個人の学会発表数で表彰して頂けたようですが、
内心は大変恐縮し、恥ずかしい気持ちでいっぱいなのが正直な所です。
と申しますのも、学会発表時の不在期間中は、
同僚の先生方に担当患者さんを代診してもらっています。

そのようなご迷惑をおかけした上での学会発表ですので、
同僚の先生方に深く感謝し、自分自身は強く恐縮している次第であり、
この表彰は個人ではなく、当施設外科スタッフ全員で受賞できたものと考えています。

私の勤務する北野病院は臓器別の担当者が決まっており、
一般臨床も学会発表も臓器別チーフを中心に方針・演題内容を決定しています。

施設として学術活動への高い意識

寺嶋部長の方針で非常に学術的な活動も盛んであり、
消化器外科系の主要学会(日本外科学会・日本消化器外科)は
研修医から上級医までの全員が演題応募するのを原則とし、
また日本肝胆膵外科学会や日本内視鏡外科学会などにも
レジデントを含めほぼ全員に演題登録をしてもらっています。

演題内容は臓器別チーフが候補を出して割振しており、
原則的に症例報告は初期研修医の担当とし、
レジデント以上には疾患や術式の後ろ向き解析検討をお願いしています。

また日々の臨床で疑問に思う内容があれば、
各自自主的に検討し学会発表してもらう事もあります。

後ろ向き研究 の重要性

時々学会でお目にかかる・・・

  • こんな手術を試しました!
  • こんな手術も出来ました!

みたいな打ち上げ花火的な発表はあまり価値がないので極力控えています。

後ろ向き研究 は「データを集積し統計学的に検討する」という
非常に時間と労力を要する苦労の多い作業です。

ただその過程で、思考力や論理性を養う事もでき、
新たな疑問が出て来てさらに別の新たな検討を行うといった
良い循環を促す事もできます。

このように苦労して完成した発表内容は
施設の質(治療方針や手術成績)を現すものであり、
施設代表として学会発表をします。

全国規模の学会発表によって洗練される

全国学会ともなれば、時に自分では気付かなかったり、
答えにくい鋭い質問でタジタジになる事もあります。

これは非常に良い経験であり、思考の抽斗を増やす機会になりますし、
次の発表機会には足りない点を充分補填・修正して、
より説得力のある内容に洗練する事ができます。

そして全国学会に再挑戦です。

また学会に参加する事は最新の知見やトレンドを掴む事ができ、
新しい手術手技や高難易度手術のビデオを見るだけでもモチベーションが高まります。

各施設の成績や手術手技を見て、自分の中での基準を設ける事で
自己満足な診療に従事していないか再確認する事もできます。

このようにして当院外科各スタッフが学術的な能力を向上させる事で、
実臨床の質にもフィードバックされるものと考えています。

一般病院ではありますが、少しでも新しい知見を発信できるような発表が
できるようにスタッフ全員で心掛けています。

今後の課題は論文化

ただ自分も含め、当院では発表数は多いのですが論文数が少ない事が問題です。

多忙な臨床の合間をぬって、折角データ収集・解析を苦労して行ったのだから
論文作成まで行わないと非常に勿体ない事です。

論文として残さないと業績にはなりませんので、
今後は学会発表だけでなく論文作成にも力を入れていかなければならないと考えています。

京都大学外科交流センター会員の皆様には今後とも
御指導御鞭撻のほど宜しくお願い申し上げます。