症例検討
- ●7歳男児
遺伝性球状赤血球症で総胆管結石、脾腫、脾下極血管腫を合併。 総ビリルビンが40mg/dlまで上昇したため、ERCPで乳頭バルーン拡張(EPBD)後切石を施行した。 減黄後 腹腔鏡下胆嚢摘除術施行。脾摘は遠隔期に行う方針。 文献的に 6ヵ月でのEPBDの報告あり。
- ●11歳女児
心窩部痛で来院。右下肺の腫瘤性病変。 右胸水があり、下肺野の腫瘤性病変とは別に右下肺野に小腫瘤が存在したため鑑別診断に苦慮した。 疼痛とCRP上昇があり、腫瘍マーカーの上昇はなかった。肺葉外分画症捻転を疑い手術を施行。胸腔鏡補助下捻転肺切除術を行った。腫病変とは別の肺病変の合併切除を目指したが切除標本には含まれていなかった。今後PETで経過観察の方針。
- ●品胎 800g台
胎便病疑いで造影を施行。生後7日目に腹水もあり緊急開腹を行った。先天性小腸閉鎖症で小腸切除一期的吻合を施行。術後4週後に急激なアシドーシスの進行と腸管拡張があり、同日に死亡の転帰となった。剖検では小腸に点状出血が存在したため、壊死性腸炎を疑っている。
- ●14歳女児 腹痛
腹部Xpで小腸ガスの拡張があり、腹部CTで腸閉塞の診断となった。イレウス管の挿入で腸閉塞は解除した。クローン病を疑い大腸内視鏡施行したが、回腸潰瘍はあるがクローンは否定的であった。CMV陰性。その後腹部Xpは改善したが経口摂取が改善しない。現時点の症状は心因性を考え経静脈栄養で補助しながら経過観察中。
- ●2歳女児
胸腰椎2分脊椎に肛門前庭部瘻を合併。人工肛門造設術後でCIC中である。 最近になって家族から希望があり今後肛門形成をするべきかを決めかねている。 家族の希望があれば人工肛門の閉鎖をめざして肛門形成を行えばとの意見が多かった。
- ●13歳女児
虫垂炎時の画像検査で4年前からある右副腎部の嚢胞性病変。 治療方針に関して話し合ったが、症状が起こるまで経過観察でいいのではとの意見が大半であった。
- ●2歳女児
腹痛 意識障害で他院から紹介。 ドクターカーで搬入され、全身CT施行された。CT上腸管の造影不良部分があり、腸管虚血の可能性があった。 緊急開腹手術前にCPRとなった。人工心肺導入後に開腹術を施行。 大量小腸切除(小腸150cmは残存)。腸間膜裂孔への内ヘルニアによる絞扼性腸閉塞であった。瞳孔散大があり平坦脳波が確認され、永眠の転帰となった。
- ●1ヵ月
胆汁性嘔吐。 ドクターカーで搬入 腸閉塞の診断で開腹。乳び腹水で充満した腸間膜リンパ管腫の診断。小腸切除施行。
- ●7歳 女児
腹部腫瘤。 左副腎部に充実性腫瘍あり。NSE104.6 VMA HVAも上昇。MIBGで骨転移あり。腹腔鏡下に生検を施行。腹腔鏡か開腹に関して意見があった。また骨転移はあるが原発巣はIDRFも陰性で一期的手術が可能である病変に関して、どのような戦略で望むかで意見交換を行った。
- ●臍帯ヘルニア
胎児診断例。1662gで出生。 臍輪あり。 Day1 サイロ形成をWound Retractorを皮膚に固定して臍帯を解放しないで行った。利点として腹水の流出が少なく、臍帯で被覆されていて感染にも強い可能性がある。やや腹腔内への還納が不十分となり工夫を要した。 Day10 2期的閉鎖施行。
- ●生後1ヵ月 女児
膣前庭部右側から便が出る。 肛門位置や形態は正常で膣前庭部から便汁の流出を認めた。 肛門と瘻孔からの造影検査を施行し、H型直腸膣前庭部瘻の診断。 おそらく感染は起こらないので待機的に手術の意見が多かった。 時に2本瘻孔があることがあるので注意が必要との意見があった。
- ●12歳 女児
腹痛 下痢 嘔吐 発熱 39度の発熱とCRPとWBCの上昇があり急性腸炎の診断で入院。 発熱が持続するため撮影された腹部CTで虫垂炎穿孔、ダグラス窩膿瘍の診断となった。エコーガイド下に経皮的ドレナージを施行した。 ダグラス窩膿瘍が残存したので臀部皮膚からCTガイド下経皮的ドレナージを施行した。炎症軽快して待機的手術の方針。
- ●13歳 男児
腹痛 上行結腸壁の造影される小隆起 上行結腸憩室炎 腹腔鏡補助下上行結腸憩室切除術を施行した。抗菌剤で軽快した場合には、必ずしも切除は不要ではとの意見があった。
- ●8歳 女児
腹痛 嘔吐で発症。 左腎尿管移行部狭窄の診断で腹腔鏡下腎盂尿管吻合を施行した。 術後3ヵ月にD-J尿管カテーテルを抜去後に症状再燃したので再留置した。 腎盂尿管吻合部と下部尿管の評価(剥離に伴う狭小化の可能性)が必要ではとの意見があった。 ●12歳 男児
左頚部腫瘤。 NSE 109 CA!25 132 MRI、CT、PETで頚部 横隔膜 腹部に多発する腫瘤性病変を認めた。 頚部の生検でDSRCTの診断となった。集学的治療の方針で化学療法を開始している。
先天性十二指腸多発閉鎖症の2例について「手術術式」の検討
① 症例1
- 生後68日に初回手術。回腸末端に白変した腸管があり、それ以外にも色調不良な腸管が散在し壊死性腸炎の診断とした。術後10日目に人工肛門の排泄が不良となり再手術を要した。その際も壊死性腸炎の再燃と考え壊死小腸部分切除、人工肛門の再造設を施行した。同人工肛門からの排泄が水様多量で経口摂取が進められないため経静脈栄養を中心にしていて体重増加はまずまず良好である。注腸で脾弯曲より口側造影されず結腸狭窄の合併の可能性もある。近日ストマ閉鎖予定。
② 291gで出生の男児。
- 生後42日目に緊急開腹術。白変した回腸をこの症例でもみとめ多発性であった。壊死性腸炎の診断とした。少量部分切除、人工肛門造設術を施行。術後この症例では全量経腸栄養に移行できているが体重増加は不良である。
症例1に関して体重増加が得られているのであればもう少し待機的でもいいのでは意見もあった。両症例ともミルクカード症候群ではとの意見があった。
小児外科専門医取得に向けての小児外科学講座
第1回 「頭頸部疾患、肺・横隔膜疾患、ヘルニア」
京都大学医学部附属病院 小児外科 岡島英明准教授