総合司会
京都大学大学院医学研究科 小児外科 岡本 晋弥先生
当院における最近の手術症例~感染対応も含めて~
- ●血友病合併患者のLPEC
- 生後9か月にLPEC施行。ポート挿入部の腹壁出血にてHb4.3まで低下。術前検査にて軽度貧血は指摘されていたが、鉄剤で対応していた。凝固系検査は通常施行されていない。術後出血にて血友病が判明。1万人に1人といわれる血友病患者の除外のために日帰り手術の術前検査として凝固能検査は必要か。通常、転倒による外傷や口唇小帯断裂で血流病が判明するケースが多いので、歩き出す1歳ぐらいまでは鑑別必要ではないか。
- ●重症心奇形合併壊死性腸炎
- 生後4日目。レントゲン上、結腸に壁内ガス像出現。CTにて門脈内ガス多発。緊急開腹術施行。結腸全体が色調不良、回腸の一部も壊死。回腸人工肛門造設。術後の注腸では骨盤内の直腸は十分拡張するが、その口側結腸は狭小化し、拡張せず。ストマ閉鎖時、結腸はどこまで使えるか。造影CTで評価できるか。
- ●大腸ポリポーシス
- 8歳女児。粘血便の頻度が増加するため下部消化管内視鏡検査施行。結腸ポリープが多発。一部高分化腺癌であった。家族歴はなく、FAPの可能性は低い。現在、遺伝子検査中。MUTYH関連ポリポーシス(常染色体劣性遺伝)の可能性。大腸亜全摘の時期は?内視鏡フォローの頻度は?癌化もしているので早期の結腸全摘が望まれるのでは。
- ●縦隔悪性腫瘍2例
- 3歳、神経芽腫。左上縦隔から椎管腔に浸潤。左胸水著明。生検でCOG高リスク。化学療法が無効であったため、積極的な手術へ。椎管内は脳外科で先行切除。胸部逆コの字切開(胸骨正中切開)にて開胸し、主腫瘍切除。可及的に播種巣切除。鎖骨下動脈、椎骨動脈切離。術前Willis動脈輪の確認は?重要血管切離時はback flowを確認すべきでは?
- ●18歳、Yolk sac腫瘍。
- 無名静脈、左肺動脈内腫瘍塞栓あり。胸骨正中切開、無名静脈合併切除。
- ●神経線維腫
- 15歳女性、神経線維腫症Ⅰ型。上縦隔気管周囲に腫瘍を認め、3歳時に呼吸困難で発症。現在、NPPVで呼吸サポートしているが、呼吸障害強い。腫瘍部分切除の適応は?気管前方のみの切除でよいか。血管合併症の対策は?側弯の原因は?
- ●感染性リンパ管腫
- 1歳6か月、右頚部腫瘤。発熱とともに発赤、腫瘤増大を認め、レントゲンにて右頚部から上縦隔に陰影、CTにて多房性嚢胞性病変を認めた。感染性リンパ管腫の診断にて抗生剤加療開始。その後、越婢加朮湯(0.2g/kg/day)投与で経過観察中。
- ●交通外傷による消化管穿孔
- 助手席でシートベルト着用。腹痛あり、バイタル安定、シートベルト痕あり。腰椎脱臼に対して整形外科にて手術、術後体幹ギプス固定。腹部CTではFree Airなし、腸間膜血管周囲、後腹膜に液貯留あり。受傷3日後に腸閉塞。術後12日目に整形外科再手術。術後16日目に腹痛増悪し、CTにて腸管拡張著明。緊急開腹手術施行。外傷性腸間膜損傷により内ヘルニア発症していた。空腸2箇所で瘢痕狭窄を認め、2箇所吻合。術後経過は良好。外傷にて腰椎の脱臼を伴う際には腸間膜損傷の報告は多い。手術時期に関して妥当であったのか?
- ●重複肛門
- 瘻孔長2cm、感染なし。手術適応は?脊椎奇形、腎奇形の精査も必要。
- ●神経芽腫
- 1歳6ヵ月、男児。著明なるい痩。下痢、電解質異常、特に低カリウム血症(尿細管障害)があり、最終的にWDHKの診断。腹部エコーにて腫瘤性病変指摘。CTにて微細な石灰化を伴う左後腹膜腫瘍を認めた。尿中VMA、HVA上昇あり。以上よりVIP産生神経芽腫が疑われた。電解質異常、心不全兆候もあるためOncologic Emergencyとして切除術施行。病気分類でvery low riskのため化学療法なしで経過観察中。発症時から下痢などの症状を伴うVIP産生腫瘍は予後良好。化学療法中の症状出現症例は予後不良。
- ●十二指腸潰瘍
- 9歳、女児。21トリソミー。嘔吐、貧血、軽度の腹痛にてCT施行したところ、十二指腸周囲の液体貯留、十二指腸内隆起性病変を認めた。肝十二指腸間膜内にfree airも疑われたため、緊急腹腔鏡下腹腔内検索施行。穿孔は認めず、同時に施行した上部消化管内視鏡検査にて著明な狭窄を伴う十二指腸潰瘍を認めた。術前ガストリン軽度高値であったためカルシウム負荷試験施行。明らかなガストリン値上昇は認めず。血中ピロリ菌抗体陰性。現在、PPI投与で経過観察中。流動食は通過するため外来フォロー中。今後の治療法は?再建するなら胃空腸吻合は避けるべき?幽門切除、Roux-en Y再建?