関係病院における肝切除のテクニックとコンセプト PARTⅡ
「関連施設における肝切除のテクニックとコンセプト」をテーマとした平成19年度京都大学外科夏季研究会をきっかけにして,京都大学肝胆膵移植外科 上本教授のご提案で,このたび第1回京大関係病院肝臓外科セミナーが開催されました。肝臓外科における手術テクニックやコンセプトを京都大学外科の同門同士が共有し,そして互いに切磋琢磨出来るような場を提供することが,このセミナー発足の最大の目的であります。
当日は強風雨という悪天候にも関わらず,当初の予想を遙かに上回る90名もの同門の先生方にご参加頂きました。
第1回のテーマは「関係病院における肝切除のテクニックとコンセプトPARTⅡ」としました。
まず関係病院5施設から代表的な手術症例を映像で呈示していただき,各症例に対する質疑応答を行いました。その後,肝実質離断時のデバイス(特にVIOシステム),実質離断時の実際的なコツ,hanging maneuverの有用性,などのテーマにつき,演者とフロアーが渾然一体となった,非常に活発で忌憚のない,しかも臨床の場に即した極めて実際的な討論が繰り広げられました。予定の2時間を約1時間近くオーバーするほどの白熱した勉強会でした。各施設のご発表を以下の通りにご紹介いたします。
1. 奈良社会保険病院の藤井英明先生:門脈腫瘍栓(Vp4)摘出を伴う肝細胞癌に対する肝拡大左葉切除術において,肝実質離断を先行させてから門脈をテーピングし,門脈腫瘍栓を可及的に摘出する高度な手術手技のコツを教えて頂きました。
2. 大阪赤十字病院の有本明先生:京大関係病院の中で肝切除の症例数が最も多い施設から,VIOシステムを用いた肝実質離断のコツと注意点についてご発表頂きました。
3. 市立岸和田市民病院の古元克好先生:肝内胆管癌に対する拡大右葉切除症例でしたが,CUSAと水出しbipolarを用いる典型的な”京大方式”に基づく非常にきれいで模範的な手術手技をご発表頂きました。
4. 高松赤十字病院の廣瀬哲朗先生:右尾状葉を主座とする下大静脈浸潤を伴う巨大肝細胞癌という難症例に対して,anterior approachによる実質離断とtotal hepatic vascular exclusion (THVE)下でのIVC合併切除,という高度な手技で切除し得たビデオをご発表頂きました。
5. 静岡市立静岡病院の張谷素子先生:肝門部の個別処理とTissue Link+ハーモニックスカルペルを用いた実質離断,という2つのキーポイントを中心に,肝中2区域切除症例をご発表頂きました。