「肝切除を伴う胆道癌」
ようやく秋の香りが漂う、いい時節になって参りました。
さて、遅くなりましたが(いつもの事で、申し訳ございません……)、第10回京都肝臓外科セミナー(2012年9月8日(土))の概要をご報告致します。
今回は93名の先生方にご出席いただきました。毎回「100名超の参加!」を目指して運営しているつもりですが、今回はその目標には達せず事務局としての努力や広報活動の至らなさを痛感した次第でした….。
今回は”第10回の節目の会”ということで、以前から幹事会の中ではテーマとして要望の強かった胆道癌に焦点を当て、「肝切除を伴う胆道癌」を主題としました。
シンポジウムに入る前に、京大肝胆膵移植外科の大学院生の井口公太先生(H17卒)から、現在on going中の大動物実験の現状を紹介して頂きました(「京都大学肝胆膵・移植外科における大動物実験の現状~コアテックによる大量肝切除における肝保護効果の検討~」)。
京都大学外科学教室の大動物実験は、小澤名誉教授や山岡前教授の時代からの伝統的な実験手法であり、今日の京都大学肝臓外科の礎になっている研究です。多くの壁を乗り越えて、素晴らしいデータが出て、学会発表や論文掲載につながることを強く望む次第です。
まずシンポジウムの始まりとして、あらかじめ各施設にお願いしていたアンケートの集計を大津市民病院の光吉先生(S61卒)から報告して頂きました(「京都大学関係病院における肝切除を伴う胆道癌の現状」)。
次に、一般演題を5題発表して頂きました。
① 「肝門部胆管癌に対する左3区域切除術」
三菱京都病院 中内雅也先生(H18卒)
② 「肝門浸潤型肝内胆管癌に対する肝動脈・門脈再建を伴う左3区域切除の経験」
田附興風会北野病院 飯田拓先生(H9卒)
③ 「動門脈合併切除再建を要した肝門浸潤型肝内胆管癌 ~3D CT cholangiographyによる手術プラニングと手術手技」
京都大学肝胆膵・移植外科 田浦康二朗先生(H6卒)
④ 「肝門部胆管癌に対する右葉尾状葉切除兼胆管切除術における手技のポイント」
東京女子医科大学消化器外科 樋口亮太先生(H9卒)
⑤ 「Bismuth-Corlette type IV肝門部胆管癌に対する右三区域切除術」
国立病院機構京都医療センター 成田匡人先生(H11卒)
いずれのビデオも高難度でありながら丁寧な手術が行われており、各発表の後には刺激的かつ教育的な討論で盛り上がりました。また、昨年江川先生が東京女子医大の教授に就任されたことが縁となって、今回は東京女子医大の胆道グループのチーフを務める樋口先生からも演題を発表して頂きました。新しい人的交流が始まり、非常に嬉しい限りです。
さて5年前にこのセミナーを立ち上げた際に、猪飼先生が「いつか肝門部胆管癌のビデオを見せ合える、そんなレベルの会になればいいのになあ….」とおっしゃっていたことが思い出されました。また懇親会の席では、財間先生が「まさか肝門部胆管癌がテーマでセミナーが出来るとは思っていなかったよ!」と嬉しい驚嘆の声を発していらっしゃいました。5年間10回のセミナーの経験を経て、京都大学関係病院全体のレベルアップが図れたことを認識できた、今回のセミナーでした。
そして最後は、北海道大学大学院医学研究科 外科学講座消化器外科学分野Ⅱの平野聡教授からの特別講演「胆道癌に対する外科治療の現在とこれから-タコシールを用いた術中止血法の実際を含めて-」です。胆道癌全般にわたって、一般臨床病院での胆道外科の実地にfeedback出来る盛りだくさんの内容を、北大の治療成績やup-to-dateの情報を交えながら、非常に分かりやすく、そして面白くお話しして頂きました。非常に感銘を受けました!お招きできて本当に良かったです。懇親会で多くの先生と話しましたが、皆さんのテンションは興奮で上がりまくっていました!
さて、これで節目の第10回セミナーの開催を無事に終えることが出来ました。
第1回セミナーの幹事会で、静岡市立静岡病院の宮下先生に「5年間は3人の先生方で思うようにこのセミナーを運営していって下さい」とお墨付きを頂き、以後、光吉先生・波多野先生と文字通り二人三脚(三人四脚!?)でいろいろと知恵を絞り、工夫を凝らしながらやってきました。その無骨な想いが伝わったのでしょうか、毎回100名近くの先生方に参加して頂き、かつ「楽しいで!」「おもろい会やなあ~」「次も楽しみにしてるでえ!」といったお言葉を頂戴できる、そんな研究会に皆様に育てて頂いたのは本当に感無量です。
昨年頃から、「10回が過ぎれば新しい、若い世代に運営を譲ろう」、と3人で話していましたので、これを機会に私と光吉先生は事務局の立場から退くことにしました。なお波多野先生は、大学とのパイプ役として,引き続き事務局に残って頂くことになりました。
さて、今後は若い世代の3人の先生、小倉記念病院の藤川先生(H4卒)、京都桂病院の西躰先生(H4卒)、倉敷中央病院の安近先生(H5卒)にバトンを渡します。次世代の観点と自由な発想でこのセミナーを運営して頂ければ幸甚です。
同門の先生方には、今までと変わらないご支援とご協力を頂くことをお願いし、このセミナーがますます発展することを切に祈る次第であります。
(文責:田附興風会北野病院 寺嶋宏明)