京都小児外科セミナー 2019年 春 の開催報告をいたします。
京都小児外科セミナーは、小児外科に関する「困難症例」で、診断や治療に苦慮した症例等について、若手も含めた関連施設の小児外科が検討することにより、その場で治療法が提案されるなど、小児外科領域での知識・手技の向上を目指しております。
今回の京都小児外科セミナー 2019年 春の開催日時は、以下のとおりです。
京都小児外科セミナー 2019年 春の当日のプログラムスケジュールは、以下の通りです。
肝移植周術期における侵襲性真菌症のコントロールは予後に関連する重要な因子である。
今回6ヶ月男児に見られた、肝移植後侵襲性真菌症疑いの臨床所見、治療経過につき報告し、特にキャンディン系薬剤(Micafungin / Caspofungin)の有用性と使い分けについて検討する。
Bile salt export pump (BSEP)はABCB11によりコードされるABCトランスポーターであり、肝実質細胞の毛細胆管側膜(CM; canalicular membrane)に発現する。
本トランスポーターは肝細胞内から毛細胆管中への胆汁酸排泄を担っており、その機能低下は肝細胞内の胆汁酸蓄積、ひいては胆汁流量の低下(肝内胆汁うっ滞)を惹起する。ABCB11の遺伝子変異により発症する進行性家族性肝内胆汁うっ滞症2型(PFIC2; progressive familial intrahepatic cholestasis type 2)は、最も重篤な肝内胆汁うっ滞症の1つであり、乳幼児期に発症し、思春期までに肝不全に至る。
現在本疾患の治療法は肝移植のみであるため、新たな医薬品開発が切望されている。本発表では、PFIC2を含む肝内胆汁うっ滞性の小児肝臓難病の克服に向け、演者らが取り組んでいる以下の内容を紹介したい。
我々はPFIC2の原因となるABCB11変異が、BSEPのCM発現量の低下を引き起こす一方で、BSEPの胆汁酸輸送活性には影響しないことを明らかにした。
次に本知見に基づき医薬品探索研究を開始し、尿素サイクル異常症治療薬のブフェニール(NaPB; sodium phenylbutyrate)にBSEPのCM発現量を増強する新規薬理作用があることをin vitro試験、動物実験から見出した。さらに尿素サイクル異常症患者を対象としたレトロスペクティブ研究により、NaPBがヒトにおいてもBSEPのCM発現量を増強する可能性を確認した。
そこでPFIC2患児3例を対象にNaPBの有効性、安全性を検証する探索的臨床試験を実施した。その結果、全てのPFIC2患児において本薬剤の服用により、肝機能検査値、臨床所見が有意に改善した。
また肝組織病理検査により、本薬剤が病態の進展を抑制していることが確認された。
以上の知見に基づき、本薬効の薬事承認を取得すべく、NaPBの国内製造販売ライセンスを保有するオーファンパシフィック社、小児肝臓病専門医の協力を得て、2016年11月より治験を開始し(UMIN000024753)。
またBSEPの機能低下が病態の発症、増悪に関与することが指摘されている、PFIC2以外の肝内胆汁うっ滞性の小児肝臓難病を対象に、NaPBの有効性、安全性を検証する臨床試験を実施している(UMIN000027666)。